シロアリの生態Termite's ecology

建築物を加害するシロアリ

わが国で建築物を加害するシロアリは主にヤマトシロアリとイエシロアリです。その他、最近"乾材シロアリ"の仲間であるアメリカカンザイシロアリ等の被害が報告されています。

シロアリの分布図
ヤマトシロアリ・イエシロアリ・アメリカカンザイシロアリの分布

ヤマトシロアリ

シロアリ木材の被害

ヤマトシロアリは北海道北部を除くほとんど日本全土に分布しています。
特別に加工した塊状の巣はつくらず、加害箇所が巣を兼ねており、適当な生活場所と餌を求めて集団で移動する習性があります。
とくに乾燥に弱いので、常に湿った材木や土中で生活しており、建物では土台や床束・大引・根太など、主に建物下部を加害します。本種の被害は腐朽と同時に起こることが多く、食痕は多湿で汚いです。

ヤマトシロアリの頭部は、ほぼ円筒形で体長の約1/2の長さがあります。
乳白色の液は出しません。
 ヤマトシロアリ兵アリ  ヤマトシロアリの群飛

イエシロアリ

イエシロアリの巣

イエシロアリは神奈川県以西の海岸線に沿った温暖な地域と南西諸島、小笠原諸島に分布しており、最近、千葉県木更津市と館山市でも発見されています。建物や地中に塊状の大きな巣をつくり、普通数十万匹、大きいものでは100万匹にも達します。したがって、加害速度も早く、被害は激烈です。建物の乾燥した木材でも水を運んできて湿しながら加害しますので、被害は建物全体に及びます。食痕は乾燥しており、きれいです。

イエシロアリの頭部は、卵形で体長の約1/3の長さです。
虫に触れると、頭部先端から乳白色の液(防御物質)を出します。
 兵アリと働きアリ  イエシロアリの羽アリ

アメリカカンザイシロアリ

カンザイシロアリの糞

アメリカカンザイシロアリは1976年に東京都江戸川区で発見されて以来、現在までに10数か所で見つかっております。今後、木材や荷物などとともに運ばれ、さらに生息圏を拡め、被害が拡大するおそれがありますので、十分注意する必要があります。特別に加工した巣や蟻道をつくることなく、乾燥した木材中に坑道を穿って小集団で生活しています。生活には特別に水を必要とせず、建物の乾材やピアノ・ステレオ・たんす・鏡台・机など家具類を食害します。被害材の食害孔から乾いた砂粒状の糞を排出するのが特徴です。

アメリカカンザイシロアリの頭部は、ほぼ円筒形でヤマトシロアリに似ていますが、体長が約2倍ほどあり、頭部が体長の約1/3の長さです。
触角の第3節が他節より長大なのが特徴です。
乳白色の液は出しません。
 シロアリの兵アリ  触角第3節



※(社)日本しろあり対策協会『シロアリ TERMITES 被害・生態・探知』より抜粋